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Zebras&Company発足にみるこれからのソーシャルビジネスへの投資展望

Zebras&Company発足にみるこれからのソーシャルビジネスへの投資展望

先日、ソーシャルビジネス界隈において希望に満ちたニュースが舞い込んだ。

㈱Zebras&Company(以降Z&C)が資金調達に成功。2021年6月21日より本格的に営業を開始し、事業成長と社会課題の解決の両立を目指す「ゼブラ企業」を後押ししていく。

Zebras&Company

(引用元:ZEBRAS AND COMPANY | ゼブラ企業を支え社会課題解決と持続的な経営に挑む企業を増やす)

Z&Cは、社会変革推進財団など合計5社から約1億円を調達し、今後ゼブラ企業の経営を支援していく。

従来のソーシャルビジネスの資金調達手段は、金融機関からの借入、助成金の利用、寄付など。もちろん利益が上がれば事業収入で資金をまかなうことができるが、現在の主な調達方法は借入がほとんどである。

しかし、金融機関は、ソーシャルビジネス事業者に対する十分な情報、支援ノウハウがないケースもある。そのため、必ずしも金融機関から十分な支援を受けられるとは限らないのが現状。

ソーシャルビジネスは資金調達以外にも、資金繰りや法律に阻まれるなどのハードルの高さもあり、道のりの険しさを感じる起業家やこれからソーシャルビジネスにチャレンジしようと考えている人も少なくないだろう。

しかし今、ユニコーン企業との比較によるゼブラ企業への注目度が高まっているのだ。一体、何を比較されてどこを評価されているのか?また、Z&Cのニュースを受けた今後のソーシャルビジネスやゼブラ企業への投資展望について解説していく。

ゼブラ企業とは~世界と日本の事例も紹介~

ゼブラ企業とは、アンチユニコーンから生まれた経営スタイルで事業を行う企業のこと(*1)。概念としてはユニコーン企業あってのゼブラ企業だが、近年独立した価値での認識が定着しつつある。

指数関数的な成長、派手な新規上場(IPO)、時価総額の爆発的増加を究極的な目標とするユニコーン企業の「シリコンバレー・モデル」に対するアンチテーゼとして提唱されている。

世界のゼブラ企業例

Saavy Cooperative(米) 

患者と医師のマッチングプラットフォーム、コンサルタントを行う。

法人オーナーを患者、従業員、創業者、株主の4つのクラスに分け、協同組合として全員が経営に参加できるというユニークな形態を実現している。

Karma(典) 

フードロスをなくすための挑戦に取り組む。空腹のユーザーと廃棄予定の商品を抱える飲食店を繋ぐアプリを提供。

日本でゼブラ企業と言える取り組みを行う企業

小さな一歩

養育費をもらえていない子供たちの権利を保証し、養育費不払い問題に取り組む。

Solio

12種類の社会課題の中から支援したいものを選び寄付をする、ソーシャルポートフォリオサービスを展開。

参考:全12個の社会課題にテーマ型寄付ができるsolioに感動している。

ローカルフラッグ

地元の海で問題となっている牡蠣の貝殻を濾過器として使うことで「飲めば飲むほど海が綺麗になるビール」の企画・販売も行う、「持続可能な地域をつくる」をビジョンに地域の旗振り役を担う京都府・与謝野町発の地域/再生環境型ゼブラ企業

陽と人

福島県国見町を拠点に「農産物の新たな規格での流通・地域資源を活用した商品企画販売・体験型コンテンツ」など、「もったいない地域資源」を需要に即したカタチで価値化し、後世に託す地域の仕組みを創出しているゼブラ企業

ゼブラ企業とユニコーン企業は何が違うのか?

資金調達を繰り返し急拡大を進めるユニコーン企業が賞賛される風潮が強くなり、ユニコーン企業を目指す起業家が増えている。

しかし、成長スピードが早いあまりに社会ルール遵守や社会的責任を追うことへの意識がなおざりなこともしばしば。

そんな中でゼブラ企業は、具体的にユニコーン企業とはどう違うのか。

ユニコーンとゼブラ企業の違い

ユニコーン企業は成長・利益が目的とされるのに対し、ゼブラ企業では本来あるべき社会像の追求が目的であり、あくまで手段として利益を生んだり、企業としての成長があるという考えがある。

なぜゼブラ企業はファンドから投資を受けるハードルが高いのか?

様々な企業の資金調達方法として最も使われているのが、ファンドからの投資。しかしファンドには3年、5年など特有の運用期間の縛りというものが存在する。

その縛りの中でより多くの収益を上げる、または上げる見込みを証明することが最重要とされている。

一方ゼブラ企業が行う事業内容では、中長期的な検証が必要であり、且つ短期的な上場やM&Aなどのイグジットは視野に入れていない。

内部的だが、数値管理的な経営手法を理解し全面的に協力できるプレイヤーが少ないことも課題となっている。(*2)

そのため3年や5年という短期間内に目に見える成果を出すことはとても難しいだろう。

ファンド側としても、投資のGOを出す判断材料が少なく、どちらにとってもハードルが高いというのが現状ではないだろうか。

日本ではまだまだハードルは高いものの、海外諸国ではソーシャルビジネスを行う企業に融資する金融仲介機関「ソーシャルバンク」による融資が行われている。

融資のリターンとしては、“社会に良い影響を与えた”などの非金銭的リターンが考慮されることもハードルを下げる大きな要素となっている。

<代表例>

 

米クレジットユニオンではコモン・ボンドという独自の基準を満たして加入した組合員を対象とした高金利預金、低金利貸し出しなどを行っている。

これらのような融資方法により、融資を受けるハードルが下がっていることが考えられる。

Z&Cの出資基準

Z&Cでは、投資に限らない構想のもと、経営支援、ムーブメントやコミュニティづくりなどの事業も行なっていくとのこと。

投資に関する情報は以下。(*3)

■対象企業

設立前〜設立3年以内、年間売上3,000〜5,000万円の規模感の企業を想定

■実施内容

今回約1億円の資金を調達し、5年間で4〜6社に対し1社あたり1,000〜2,000万円の投資を実行予定。

期限が区切られており、必ずその期限までのイグジット(保有する株式の売却)が必要なファンド形態ではなく、企業形態としての投資を行うことにより長期的な投資を可能に。また、レベニューシェアなどの手法を取り入れ、投資家、起業家双方にとって継続的に利益を生み出せる仕組みを提供。

ソーシャルビジネスへの投資の展望

今回取り上げたZ&C、その他にもESG投資、鎌倉投信などの事例より、以前とは異なる軸で投資される企業が増える、あるいはその軸に合わせて事業モデル・経営体制などのガバナンスを変える企業が増えるだろう。

第3章でのべたようなゼブラ企業が投資されにくい課題を解決するための、新たな株式市場のルールチェンジが今まさに起きている。