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【SDGs目標4】質の高い教育をみんなに~大学・企業の取り組み事例~

質の高い教育をみんなに

こんにちわ。ソーシャルビジネスを日本に広めたい南(@minami_shiroInc)です。

私自身も非行少年時代(小学2年生~中学2年生)を経て、「学校からはみだされてしまった子どもの隣にいるような教師になる」という夢をみつけ、猛勉強の末、教員免許を5つ取得したくらい教育については中学生の頃から考えて行動してきました。

大学時代には、「俺らの教育談議」という教育に関するテーマを1つ選び、社会人と大学生が対話する空間を創り、SDGs目標4に関する親の悩みや学校現場の実態について深く対話してきました。

本記事でいろいろお話していますが、最後の「わたしたちにできることは何か」だけでも読んでいただき、一人ひとりができることについて考えてもらえるとすごくうれしいです。

SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の内容とターゲットとは?

SDGs(持続可能な開発目標)の目標4「質の高い教育をみんなに」の主な内容は以下のとおりです(*1)。

  • 教育におけるジェンダー格差をなくし、障害者、先住民族や脆弱な立場にある子どもなどを含むすべての人が、あらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。
  • すべての学習者が、持続可能な社会を実現するために必要な知識や技能を学ぶことができるようにする。例えば、持続可能な開発のための教育(ESD)やライフスタイル、人権やジェンダー平等、平和や非暴力の促進、文化多様性の理解などを通じて。
  • 技術的・職業的スキルなど、働きがいのある人間らしい仕事や企業に必要な技能を備えた若者や星人の割合を大幅に増やす。

また、これらの問題の背景にあることは以下のとおりです(*1)。

  • 発展途上国の初等教育就学率は91%に達しましたが、学校に通えない子どもがまだ6,000万人近くいます。
  • 小学校就学年齢で学校に通っていない子どものおよそ50%は、紛争地域に住んでいると見られます。
  • 最貧層世帯の子どもが学校に通っていない確率は、最富裕層の子どもの4倍にのぼります。
  • 世界は初等教育の男女の平等を達成しましたが、すべての教育レベルでこの目標を達成できている国はほとんどありません。

日本で暮らしていると「学校に通えない子どもがいる」という事実をあまり聞かないかもしれません。ですが、日本でも親からの虐待、学校でのいじめ、経済状況などあらゆる理由で学校に通えない子どもがいます。

このような心が苦しくなることが世界だと約6,000万人もいる現実……。

あなたはこの現状に何を思うでしょうか?

目標4「質の高い教育をみんなに」のターゲット

目標4の対象であるターゲットが定められています。

動画で見たい方は国連教育科学文化機関(UNESCO)が制作した動画でご覧ください。

 

・4.1

2030年までに、全ての子供が男女の区別なく、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。

・4.2

2030年までに、全ての子供が男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。

・4.3

2030年までに、全ての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。

・4.4

2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。

・4.5

2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子供など、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。

・4.6

2030年までに、全ての若者及び大多数(男女ともに)の成人が、読み書き能力及び基本的計算能力を身に付けられるようにする。

・4.7

2030年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。

・4.a

子供、障害及びジェンダーに配慮した教育施設を構築・改良し、全ての人々に安全で非暴力的、包摂的、効果的な学習環境を提供できるようにする。

・4.b

2020年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、並びにアフリカ諸国を対象とした、職業訓練、情報通信技術(ICT)、技術・工学・科学プログラムなど、先進国及びその他の開発途上国における高等教育の奨学金の件数を全世界で大幅に増加させる。

・4.c

2030年までに、開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国における教員研修のための国際協力などを通じて、質の高い教員の数を大幅に増加させる。

「質の高い教育」って何でしょう?

「質の高い教育」といっても様々。

SDGsで定められている「質の高い教育」の一つにICTスキルの向上があります。

ICTスキルの詳細な内容は以下のようなものです(*2)。

  • エクセル、Open Office 等の表計算ソフトを使用して足し算や引き算等の簡単な計算をすることができる
  • 写真や文書を添付して電子メールを送ることができる
  • パワーポイント、Keynote 等のプレゼンテーションソフトを使用して資料を作成することができる
  • インターネットを利用してソフトウェアのダウンロードやインストールをすることができる
  • パソコンと他の機器(スマートフォン、タブレット等)との間でデータのやり取りをすることができる

日本でも50%を切る項目もあります。ICTスキルだけに限りませんが、日本も「質の高い教育」をあらゆる関係機関が協力し実現していく必要があります。

世界には15歳以上で読み書きできない人が何人いると思いますか?

約7億5,000万人います(*3)。日本の人口より約6倍も多い人が読み書きできないのが現実……。

読み書きができないということは、本を読むことができないために学習レベルの低下につながったり、仕事で欠かせない書類を作ることが困難だったりと生活や仕事にかなり支障をきたしてしまいます。

読み書きできないことで貧困に陥ってしまうなどSDGsの別の目標にも関係してきます。

日本は目標4を達成していると思われがち

ここまでにお話してきた事実を聞いて、「日本は目標4達成してるじゃん」と思われた方もいるかもしれません。実際わたしがお会いした人で「日本の子どもはみんな学校に行けてるし、勉強できる道具もあるから達成してるでしょ」とおっしゃる方がいました。

しかし、SDGsの理念である「誰一人取り残さない-No one will be left behind」を考えた際に、果たして本当に日本は目標4を達成していると言い切れるのでしょうか?

私が教育実習で小中学校に行った際、家庭の事情で給食費や制服やカバンなどの費用を払えず困っている子どもがいました。また、私の出身である小学校ではブラジル人学級があり日本語が話せない子どももいました。

これらのような実態が日本全国にあります。日本にもまだまだ目標4を達成するための課題が山積みなのです。

大学の取り組み事例

SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」を達成するために実施されている大学の事例を一つご紹介します。

今回ご紹介するのは、神奈川大学です。

神奈川大学はイギリスのタイムズ社が発表したSDGsを軸に大学の社会貢献度を測る「THE大学インパクトランキング2019」で全SDGランクインした大学です。

神奈川大学のSDGs目標4達成に向けた取り組みの一つに、「一日大学生」があります。

湘南ひらつかキャンパスに大磯町の小学校に通う3年生〜6年生35名を対象に放課後子ども教室の一環として「一日大学生」を開催しています。

キャンパスを見学したり、学食を食べたりと大学キャンパスツアーを行なっています。それに加え、液体窒素を使って花やボムボールなどを凍らせる、物の状態の変化を観察するといった化学実験講座も教授が小学生に対して開催しています。

小学生が夢中になって講座に参加している姿がうつっているので、ぜひ神奈川大学のお知らせ「大磯町・神奈川大学連携事業「一日大学生」を開催しました」をご覧ください。

企業の取り組み事例

続いて、SDGs目標4に取り組む企業の事例をご紹介します。

今回ご紹介するのは株式会社電通(以下「電通」と称する)。

電通は「質の高い教育をみんなに」を達成するための一環として、「広告小学校」の事業を展開しています。

広告小学校は、現場にいる小学校の先生と伴に創るプログラムで、子ども達のコミュニケーション力を培う授業。子ども達が協力して15秒のCM劇をつくる取り組みです。

2019年3月末時点で全国350校、4万7,000人を超える子ども達が体験しています。

公式ページには実際につくられた「入門CM」「自分探検CM」「公共CM」があります。

長年、CMなどのプロモーション・クリエイティブに関する事業展開をしてきた電通だからこそできる意義ある取り組みだなと思います。

OECDエデュケーション2030も

「質の高い教育をみんなに」の達成と関連しているのが「OECDエデュケーション2030」です。

簡単にOECDエデュケーションについて解説します。

OECDエデュケーション2030とは

OECDエデュケーション2030とは、予測不可能な時代を生きていくために知識・スキル・人間性をどのように育むかをOECD加盟国で考え、教育制度の将来に向けたビジョンとそれを支える原則を示したものです。(*4)

OECDエデュケーション2030で必要とされる3つの力

OECDエデュケーション2030では、「変革を起こす力のあるコンピテンシー」として以下の3つの力の育成が必要としています。

①新たな価値を創造する力

より強固で,より包括的で,より持続的な発展のためには,新たな成長のための資源が直ちに必要となる。イノベーションにより,あまりコストをかけないで,経済的,社会的あるいは文化的なジレンマに対する重要な解決策が得られる。

イノベーションに富んだ経済は,より生産的で,強靭で,順応性があり,より高い生活水準をもたらすことができる。2030 年に備えるためには,創造的に考えたり,新しい製品やサービス,仕事,プロセスや方法論,新たな思考方法や生活様式,新たな起業,新たなセクター,新たなビジネスモデルや社会モデルを開発したりすることができるようにならなければならない。

今後,イノベーションは,個々人の思考や作業のみならず,他者との協力と協働により既存の知識から新しい知識を生み出すことを通して,ますます引き起こされるようになる。このコンピテンシーを支える構成概念としては,適応力,創造力,好奇心や,新しいものに対して開かれた意識が含まれる。

(出所:Education 2030【仮訳(案)】P.6)

SDGsを達成するためには、今までにはない社会問題が解決される仕組みやビジネスを創る必要があります。

それに必要な力として「新たな価値を創造する力」が挙げられています。

参考:SDGsターゲット解説した

②対立やジレンマを克服する力

格差によって特徴づけられる世界においては,多様な考え方や利害を調停していく緊急性があり,そのためには若い世代が,例えば公平と自由,自治と集団,イノベーションと継続,効率性と民主的プロセスといった対立軸のバランスをとるなど,対立やジレンマ,トレードオフの扱いに熟達することが求められる。

対立する要求の間でバランスをとることが求められる場合,二者択一での選択や単一の解決策につながることは稀である。十分に練られていない結論を出すことを避ける,相互関係を認識するなど,一人一人がより総合的に考える必要がある。

相互依存や紛争が生じている世界では,自分や家族,あるいはコミュニティのウェルビーイングを確実に確保していくためには,他者のニーズや欲望を理解する力をつけるほかないのである。将来に備えていくためには,矛盾した考えや相容れない考えや論理,立場についても,それらの相互のつながりや関連性を考慮しながら,短期的な視点と長期的な視点の両方を踏まえて,より統合的な形で考え行動していくことを学習する必要がある。

違う言い方をすれば,システム的な思考をするように学習しなければならないのである。

(出所:Education 2030【仮訳(案)】P.6−7)

会社でも異なる価値観の人と一つのプロジェクトを実施する時があるかと思います。時には意見が対立するシーンもあるでしょう。そのような異なる価値観を受け入れつつ、対立を克服していく力が必要とされています。

③責任ある行動をとる力

「変革を起こす力のあるコンピテンシー」の3つ目は,他の2つの前提となるものである。新しいこと,変革,多様性や曖昧さに対応していくということは,個々人が自分たちのことを考えると同時に他者と協働することを想定している。

同様に,創造性や問題解決力は個人の行為がもたらす将来の帰結を考え,リスクと報酬を評価し,自分の仕事の成果物について責任をとることを必要とする。このことは,責任感を示唆するとともに,過去の経験や社会的・個人的目標,これまで教えられ言われてきたこと,何が正しく何が間違っているかといったことに照らして,自分を振り返ったり,自分の行為を評価するという道徳的かつ知的な成熟性を示すものであると言える。

倫理的に行動するということは,例えば,「私は何をすべきか」「それをしたことは正しかったのか」「限界はどこにあるのか」「自分がしたことの帰結を知った上でそれをすべきだったか」といった,規範や価値,意義や限界に関連する問いかけをするということである。

このコンピテンシーの中核となるのが,自己調整の考え方であり,自己コントロール,自己効力感,責任感,問題解決,適応力を含むものである。発達神経科学の進展により,脳の可塑性の2回目の急激な増大は思春期に起きることが示されている。また,最も可塑性の高い脳の領野や仕組みは,自己調整の発達に関するものであることも示されている。

思春期は,もはや,単に脆く傷つきやすい時期としてではなく,責任感を醸成する機会として捉えられるのである。

(出所:Education 2030【仮訳(案)】P.7)

解決したいこと、達成したい目標のために、どのような行動をする必要があるかを決め、決めたことに対して責任を持とうとする力が必要とされています。

少しお堅い話になったかもしれませんね。

SDGs目標4の達成に関連する「質の高い教育」には、OECDエデュケーション2030の学習枠組みも含まれています。

わたしたちにできることは何か

さて、これまでSDGs目標4について、大学や企業の取り組み事例、OECDエデュケーション2030などについてお話してきました。

大学、企業など組織でしかできないこともあります。その組織としてSDGs目標4にどう取り組むかとは別に、私たち一人ひとりが日常でできることは何でしょうか。

私は少なくとも4つあると考えています。簡単に個人が具体的にできる4つのことを最後にお話しようと思います。

教育や子どもの実情を知って、伝える

まずは日本の教育や子どもの実情を知ることではないだろうか。

本記事でお伝えしたこと以外にも、日本の教育制度や子どもを取り巻く環境に課題があります。

教師の働き方、障害や貧困によるいじめ、教育の格差などあらゆる問題が日本にはまだあります。

それらの問題についてちょっとでも知って、SNSで発信したり、職場や家族に伝えることも私たちができることではないでしょうか。

目標4を達成するためにできることを考えて、実行する

目標4を達成するためには、バックグラウンドが異なる人たちがどうすれば達成できるか、何ができるかを伴に考えて実行していく必要があります。

リアルの世界でそのようなイベントが提供されています。ただやはり、仕事で時間がなかったり、いつどこでそのようなイベントが行われているのかを知りたくても知れない人と私は会ってきました。

SNSなどをつかってもいいですし、誰かとどんなことでもいいので、目標4を達成するためにできることを考え、少しずつ実行していくことも私たちができることです。

目標4達成に向けてアクションしている団体に寄付する

REDYFOR」のようなクラウドファンディングサービスで目標4に向けて取り組んでいるNPO法人が資金を集めているケースがあります。

REDYFORでNPO法人を探す

クラウドファンディングサービス以外にも、「教育系NPO法人」などのキーワードで検索すると懸命に子どもたちのために活動しているNPO法人と出会えます。たとえば、「D×P(ディーピー)」「Learning for All」「放課後NPOアフタースクール」などがあります。

こういったNPO法人のホームページにいくと、寄付するページがありますので、寄付して貢献したい!と思われる方はぜひ想いが湧くNPO法人をみつけて寄付してください(^^)

子ども達に会いに行く

先ほどあげたようなNPO法人では寄付だけでなく、ボランティアを募集しているケースがあります。

まずは子ども達に会いに行き、子ども達の表情や言葉に触れてみてください。このような記事を書いている私が言うのもおかしいのですが、やはり実際に会ってみないと感じられないもの、心が突き動かされないものはあります。問題は現場で起きています。ぜひ、現場にも足を運んでみてください!

といったボランティアを探せるサイトもありますのでご活用ください。

まとめ

15歳以上で読み書きできない人が約7億5,000万人いることや学校に通えない子どもが数銭万人いるなど日本も含めた世界の教育実態をお伝えしてきました。

あなたは何を思いましたか?

人によって捉え方は異なります。自身の生活で精一杯で悲しいとは思うが、人のことを考えられる余裕がないという人もいると思います。

私もそうです。仕事で大変な時もあり、毎日毎時間子ども達の苦しみについて思いをめぐらせている訳ではありません。

ただ、ちょっとでも日常の中で心や時間に余白が生まれたときに、私も含めてみんなで少しずつ苦しんでいる、泣いている子ども達のためにできることを考えてみませんか?

【参考・引用】

*1:一般社団法人 環境パートナーシップ会議(2016).パートナーシップでつくる私たちの世界-国連の新しい目標-2030年に向けて-.13

*2:JAPAN SDGs Action Platform 外務省.12歳以上の調査対象者に占めるICTスキル別の割合 作成方法.1

*3:Literacy Rates Continue to Rise from One Generation to the Next(UNESCO,2017)

*4:文部科学省.教育とスキルの未来:Education 2030【仮訳(案)】

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南 翔伍
南 翔伍
株式会社SHIRO 代表取締役。「貧困・虐待・非行の原体験 × ソーシャルビジネス経験」で社会問題解決に挑戦しつづける / 大学時代NPO法人と立ち上げた団体で貧困と障害をテーマに100名以上の子ども達を支援 / デジタルマーケティングのベンチャー企業での修行後、発達障害者支援をするソーシャルカンパニー、Web上で被害者と弁護士をつなぐリーガルテック企業でマーケティング責任者・事業統括マネージャーを務める / ソーシャルビジネス/社会的責任マーケティングに関する講演・ワークショップをしつつ、プラットフォームとWebメディアのグロースに専念