BUSINESS

コロナ時代に企業が企業に寄付するコーズリレーテッド・マーケティングで音楽業界・飲食業界の助けになれないか考えてみた。

企業連盟が新型コロナにより経営状況厳しい企業に寄付するモデル

こんにちわ。ソーシャルビジネスを日本に広めたい南(@minami_shiroInc)です。

新型コロナウイルスによって、今、大打撃を受けている業界がある。

その業界を企業が協力して力になれる方法がないかと考え込んでいた際に、社会的責任マーケティングの1つであるコーズ・リレーテッド・マーケティングを応用すれば、少しは力になれるのではないかと思い立った。

もしコーズ・リレーテッド・マーケティングについて初耳の方は、「SDGs・サステイナブル時代に必要な社会的責任マーケティング(ソーシャルマーケティング)とは?体系的に解説!」をさくっと読んだ後に、本記事を読んでいただけると分かりやすいと思われる。

本記事を読み、共感してくださった企業様がいらしたら、お声がけください!

どこまで具現化できるかは不透明ですが、こんな状況だからこそ、何か具体的なアクションができないかといてもたってもいられず、筆を執りました。

1分で、社会的責任マーケティングの1つであるコーズ・リレーテッド・マーケティングのおさらい

(狭義の)コーズ・リレーテッド・マーケティング

社会的責任マーケティングの1つであるコーズ・リレーテッド・マーケティングとは、企業が商品・サービスの売上から得た利益や取り引きに応じて組織(主にNGO/NPO,協会,一般社団法人など)に寄付することを指す。

一般的なコーズ・リレーテッド・マーケティングは「企業→ソーシャルセクター」の寄付モデル

コーズ・リレーテッド・マーケティングで多いモデルは「企業→ソーシャルセクター」の寄付モデルだ。

ソーシャルセクターとは、NGO/NPOなどの社会的問題の解決を目的とする組織のことだ。非営利組織だけでなく、営利組織も含まれる。

企業同士が協力して、新型コロナウィルスで経営状況が悪化している業界の力になれないか?

一般的なコーズ・リレーテッド・マーケティングのモデルは、企業がソーシャルセクターに寄付するモデルと紹介した。

しかし、企業が企業に投資ではなく、寄付するモデルがもっと盛んになってもいいはずだ。

コーズ・リレーテッド・マーケティングのモデルを応用して、業績に多少ゆとりのある企業が、外的要因などによって経営状況が苦しい企業に資源を分配するモデルがあってもいいのではないだろうか。

企業連盟が新型コロナにより経営状況厳しい企業に寄付するモデル

事例があれば、ぜひとも知りたいので私のTwitterか「お問い合わせ」から情報を提供していただけると幸いだ。

2020年にペスト・黒死病まではいかずとも、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に世界が、日本が苦しめられている。

実際のところ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、どんな業界、どんな企業の業績が悪化したのか見てみよう。

帝国データバンク:新型コロナウイルスの影響による上場企業の業績修正動向調査(2020年3月3日時点)

株式会社帝国データバンクの調査によると、上場企業50社が、「新型コロナウイルス」の影響を受けたとして業績の下方修正(連結、非連結)を発表したようだ(*1)。

その50社が、下方修正をおこなったことで減少した売上高の合計は 4064 億 4300 万円。

株式会社帝国データバンク「新型コロナウイルスの影響による上場企業の業績修正動向調査
(出所:株式会社帝国データバンク「新型コロナウイルスの影響による上場企業の業績修正動向調査(2020 年 3 月 3 日時点) 」)

私が家具で大好きな株式会社山善も……。

東京商工リサーチ:上場企業「新型コロナウイルス影響」調査 (5月13日時点)

株式会社東京商工リサーチによると、業績の下方修正した合計額は、売上高「4兆8,405億円」、最終利益「3兆1,148億円」とのこと(*2)。

情報開示した2,601社のうち、決算短信や月次売上報告、業績予想の修正などで新型コロナウイルスによる業績の下振れ影響に言及したのは803社だった。一方、「影響の懸念がある」、「影響を精査中」、「影響確定は困難で織り込んでいない」などの開示は879社だった。

 下振れ影響を公表した803社のうち、580社が売上高や利益の減少などの業績予想、従来予想と実績との差異などで業績を下方修正した。業績の下方修正額のマイナスは合計で、売上高が4兆8,405億円、最終利益が3兆1,148億円に達した。

マネーフォワード:新型コロナウイルス感染症の影響による経営状況に関するアンケート調査

株式会社マネーフォワードが20歳以上の経営者・役員に調査した結果が以下だ(*3)。

【企業アンケート調査:TOPICS】

■売上の影響と対策

・6割の企業が売上減少、そのうち2割以上が売上が50%以上減少したと回答

・売上減の対策として「補助金・助成金の利用」が最多

・6割以上が売上減の状況が「半年以上続く」と回答

・約4社に1社が資金不足を生じている

■補助金・助成金制度について

・66%が「利用する可能性がある」と回答、実際に利用したのは1%

・64%が「理解していない」と回答

■融資の対応

・49%が「申し込みを検討している」と回答、実際に利用したのは8%

・申し込んだ企業のうち、約半数が「融資を初めて申し込んだ」と回答

・申し込んだ企業のうち、75%が融資完了・完了見込み

・融資申し込み先として最も多いのが「政府系金融機関」、次いで「銀行」

6割以上が売上減の状況が「半年以上続く」と回答している……。

業績の話とは変わるが、私の知り合いの経営者は、いまの状況が1,2年続くと予想し、オフィスを解約したり、アメリカ大手テクノロジー会社フェイスブック、グーグルなども在宅勤務を年末まで延長したり(*4)、企業への影響は甚大だ。

ちきりんさん:壊滅度別の業界リスト(新型コロナ編)

社会派ブロガー & 紀行文筆家のちきりんさんが独断と偏見で各業界の新型コロナによる壊滅度のレベル分けをしている。

もっとも新型コロナによる壊滅度レベルが高かったのが以下だ(*5)。

<壊滅度5>

企業の存続が不可能になりかねないほどの壊滅度

◆旅行業界

旅行会社、クルーズ船会社、観光バス会社の他、個人ガイドさん、旅行グッズのレンタルショップ、免税店、土産物ショップなども

◆ホテル、旅館

借金して不動産を購入し、民泊やってる人も大変そう

◆観光施設、レジャーランド

◆百貨店

◆旅客運輸産業

航空会社、空港、新幹線など。ただしこれらの企業は倒産ではなく、ほんとに成り立たなくなれば国営化なんだろうと思います。

◆日本語学校、留学支援エージェント

海外からの労働者斡旋会社かな

◆飲食店、バー、クラブ

銀座の花屋や美容院など、飲食接待業に携わる人が使っていたサービスも含む

◆風俗業界

◆エンターテイメント産業

スポーツ業界、音楽業界(コンサート関連)、ライブハウス、演劇業界、映画館、映画制作会社など

◆イベント、展示会の関連業種

会場施設、貸しホール、イベントの備品会社、会場設営会社など

◆ブライダル産業

結婚式も続々中止となり、かつ、キャンセル料をとっていない会社も多いとか。関連のフリーランス(美容師さん、着付師さん、MCの方)や花屋さんなども厳しそう

◆エネルギー産業

石油大暴落で、各種エネルギー会社だけでなく、資源投資の多い商社も

◆病院、クリニック

めちゃくちゃ忙しい(需要は増えてる)けど、院内感染がでたら倒産しかねないし、医療従事者自身、命の危険と背中合わせの勤務が続いてます

私の知人の資源投資の多い商社、友人のイベント会社・旅行会社も壊滅的な経営状況だと話を聞いた……。

また、投資家として有名なウォーレン・バフェット氏が航空会社株をすべて売却したニュースも衝撃だっただろう。

参考:バフェット氏の投資会社、赤字5兆円超 航空株全て売却

 

新型コロナの企業、ないしは消費者への影響の甚大さは言うまでもなく、とてつもない……。

隣にいる仲の良い友達が苦しんでいる時に、助けたくなる気持ちと同じように、ちょっとでも経営や家計にゆとりのある人が集まり、悲しすぎる事態に陥っている組織や個人の力になれることはないだろうか、とビルの屋上でおにぎりを食べながら青空を見上げている時に思った。

蒼臭いと言われるかもしれないが、どうにか方法がないかと模索したいところだ。

「塵も積もれば山となる」はずで、1企業からの寄付額は少額であったとしても、企業連盟をつくり、連盟内のトータル寄付額はそれなりになるのではないだろうか。

もちろん、どうやって連盟をつくる?、どんな条件で寄付する企業決める?など決めないといけないことはいくつかあるが、やれなくはないのではないはず。

企業連盟までいかずとも、1企業が付き合いのある、もしくはお世話になっている1企業に、売上の一部を寄付する動きも日本のどこかではあるかもしれない。

お世話になっているアーティストのプロデューサー兼マネージャーの方と話していたライブハウスへの寄付モデル、危機的な状況に陥っている飲食業界への寄付モデルの2つの取組み案を述べていく。

企業が企業に寄付するコーズ・リレーテッド・マーケティング案~音楽業界と飲食業界の力になれるか?~

私がお世話になっているアーティストのプロデューサー兼マネージャーの方から、よくこんな悲鳴を聞く。

「ライブを中止しないとだし、ライブハウスオープンしたとしてもお客さん来ないし、サブスクで何とか収益出そうとするけど、インディーズだとメジャーには太刀打ちできない。どうしたもんかね……」

私の友達も、ライブハウスに行けなくて、「生活の癒しがなくなって最悪。もう嫌だ……」と苦しんでいる……。

大手レーベルなど強力なバックグラウンドのあるアーティストならまだ話は別かもしれないが、インディーズなど活動資金も少なくまだ認知度も低い、運営資金が潤沢にあるわけじゃなかったライブハウスなどは、窮地に追いやられている人がいる。

ぴあ総研の調査によると、令和2年3月23日時点で、中止延期等により売上がゼロもしくは減少した公演・試合の入場料金の総額は、確定値で1,750億円、推定値で1550億円。合計すると、3300億円の損害があることになる(*6)。

ライブハウスの緊急事態を受け、新型コロナによって苦しい状況になっているライブハウスを支援しようとするプロジェクトが立ち上がっている。

新型コロナの影響で苦しい状況に陥っているライブハウスを救うプロジェクト

MUSIC UNITES AGAINST COVID-19
(出所:MUSIC UNITES AGAINST COVID-19)

フォルダのアクセス権をダウンロード購入することで、自分が応援したいライブハウスを支援することができる「MUSIC UNITES AGAINST COVID-19」。

MUSIC UNITES AGAINST COVID-19は、日本が世界に誇るロックバンドtoeが発起人となり、LIVE HOUSE FEVER、株式会社CIDER、有限会社SIMONEと共にはじめたライブハウス支援プロジェクトである。

MUSIC UNITES AGAINST COVID-19
(出所:PR TIMES「全国のライブハウスを支援するプロジェクト「MUSIC UNITES AGAINST COVID-19」を開始します」)

音楽が格納されているフォルダのアクセス権を買うことによって、ライブハウスを支援できる仕組みが、とても興味深い。

LIVE FORCE, LIVE HOUSE.

(出所:LIVE FORCE, LIVE HOUSE.)

ROCK/POP系のBANDが主に出演している、全国の独立系のライブハウスを対象とした支援プロジェクト「LIVE FORCE, LIVE HOUSE.」も、ライブハウスを支援するプロジェクトの一つだ。

第1次支援総額は63,153,182円で、各地域のライブハウスに支援金が贈られている。

ライブハウス支援まとめ
(出所:e+(イープラス))

また、株式会社イープラスが運営する「e+(イープラス)」では、全国のライブハウスと応援したい想いをもつ人をつなぐWebサイトをオープンしている。

全国の有志団体やライブハウスの取組み事例がたくさん掲載されている。

ライブハウスを支援するプロジェクトを立ち上げようと決意した方々の心が本当に綺麗だ。人として尊敬する。

ただ、支援したくてもできない組織や個人もいるならば、その組織などがライブハウスに支援する仕組みを創れないかと思い立った(もちろんライブハウス以外への支援モデルも必要)。

企業連盟が新型コロナにより経営状況厳しい企業に寄付するモデル

コーズ・リレーテッド・マーケティングであれば、「売上の一部」をライブハウスに支援することになる。また、音楽に対して情熱があり、ライブハウスをどうにかしたいと強く想っている人なら、ある企業の商品・サービスを購入して、一部がライブハウスに還元されるのであれば、率先して購入する人もいるだろう。

特定の大好きなライブハウスに還元されないなら購入しないと考える人も少なからずいるだろうが、「特に大好きなライブハウスがある訳じゃないけど、音楽やライブが大好きだから、どこかしらのライブハウスの助けになれるなら」と思い、アクションしてくださる人がいるんじゃないだろうか。

音楽業界内だけでみると、Spotifyなどのサブスクリプションの売上の一部を、ライブハウスに寄付するなどの似たような動きがある。しかし、音楽業界以外の企業が、音楽業界の企業を支援するモデルがあってもいいのではないだろうか。

音楽や映画などのアートは「不要不急」と言われると、違和感がある。確かに、音楽がなくても、映画がなくても「死にはしない」だろう。しかし、豊かに生きるためには、アートが必ず必要だと私は考えてる。極端かもしれないが、アートを根絶やさないためにも、音楽業界外の企業が、音楽業界の企業にコーズ・リレーテッド・マーケティングを実施するのも必要かもしれない。

新型コロナの影響で苦しい状況に陥っている飲食店を救うプロジェクトや企業のサービス

話を飲食業界にうつす。

飲食店を支援するプロジェクトもいつくか立ち上がっている。

レストラン寄付.com

(出所:レストラン寄付.com)

Twitterで交流のある(株)マイズソリューションズ代表取締役の舛田陽介さんが立ち上げた「レストラン寄付.com」は、コロナ禍に直面する飲食店に一口1,000円から簡単に寄付できるWebサービスを展開している。

レストラン寄付.comビジネスモデル(出所:PR TIMES「全国各地の飲食店に簡単に寄付できるWEBサイト『レストラン寄付.com』スタート」)

絶賛、全国各地のレストランを募集しているようだ。

他にも多くの企業が、ピンチになっている飲食店を助けようと、無料・少額でサービス提供している。

新型コロナで苦しむ飲食店を支援している企業の一覧をGoogleスプレッドシート「新型コロナウイルスと闘う飲食業界を救う企業の支援サービス一覧」にまとめております(本シートへのご意見・お問い合わせ・ご要望は筆者Twitter、「お問い合わせ」よりご連絡よろしくお願いします)。

本シートに記載されていない支援サービスがあれば、ぜひ追記していってくださると幸いです。また、支援している企業と支援を必要としている飲食店が出会えるように日本全国に拡散していただけますと幸いです!

企業連盟が新型コロナにより経営状況厳しい企業に寄付するモデル

飲食店に対しても、ライブハウスと同様のコーズ・リレーテッド・マーケティングを実施することができるだろう。

各企業が飲食店に対して無料・少額でサービスを提供するモデルも必要だが、やはり資金そのものを必要としている飲食店も少なくないだろう。

各企業が本業で売り上げた一部を飲食店に寄付するモデル、つまり企業が企業に寄付するコーズ・リレーテッド・マーケティングも十分意義あるアクションになるのではないだろうか。

慈善行為、売名行為というより「寄付は想いや資金を託すこと」ではないか?

ここで、そもそもの「企業が寄付する」アクションに対して、私の考えを述べておく。

私が左サイドバックとしてプレイしている時にもっとも尊敬していたプロサッカー選手の長友佑都選手が、寄付を公表すると売名だ、偽善行為だと言ってくる人に対する意見をTwitterで発信していた。

それに対して、同じくプロサッカー選手の本田圭佑選手が、「売名でいいやん。偽善でいいやん。その寄付で困ってる誰かが救われるって事実は変わらんよ。」とツイートしている。

寄付は寄付先やその先にいるお客様、寄付先の家族を幸福にできるのでは?

一つの考えとして、寄付することは、想いや資金を相手に託すことだ。寄付された組織や個人は、寄附金のおかげで経済活動を継続できたり、活動の質を高められたりする。

すると、(少し飛躍しているかもしれないが)その寄付された組織や個人が経済活動を継続できることで、その組織や個人が提供しているサービスを購入していたお客様、(失業、家計の圧迫などを回避することで)組織内の人や個人のご家族を、幸福にできることにつながっていくのではないだろうか。

つまり、売名だろうが、偽善行為だろうが、寄付できる人が寄付することで、救われている人がいるのは事実だ。

だからこそ、私は寄付する組織や個人に敬意を払っている。

本記事で紹介した、企業が企業に寄付するコーズ・リレーテッド・マーケティングを実施する企業にも敬意を払う。誰にでもできることじゃない。

私自身、本記事で紹介したコーズ・リレーテッド・マーケティングを実施するアイデアを実行にまで移すパワーが足りていない。

もし、賛同・共感してくださり、共に実施してくださる組織・個人の方がいれば、ディスカッションするベースでご連絡いただけると幸いである。

(筆者Twitter、「お問い合わせ」よりご連絡よろしくお願いします)

ABOUT ME
南 翔伍
南 翔伍
株式会社SHIRO 代表取締役。「貧困・虐待・非行の原体験 × ソーシャルビジネス経験」で社会問題解決に挑戦しつづける / 大学時代NPO法人と立ち上げた団体で貧困と障害をテーマに100名以上の子ども達を支援 / デジタルマーケティングのベンチャー企業での修行後、発達障害者支援をするソーシャルカンパニー、Web上で被害者と弁護士をつなぐリーガルテック企業でマーケティング責任者・事業統括マネージャーを務める / ソーシャルビジネス/社会的責任マーケティングに関する講演・ワークショップをしつつ、プラットフォームとWebメディアのグロースに専念